<独自>南シナ海の中国権益に日本異議 大陸棚委 日米声明「不法盛る」

日本政府が国連海洋法条約に基づく大陸棚限界委員会(CLCS)で、中国政府が南シナ海に外国船舶の無害通航権を認めない「内水」を設定する動きをみせていることに異議を唱えていたことが18日、分かった。日本が南シナ海で中国の違法性を主張したのは初めて。「自由で開かれたインド太平洋」に向けた取り組みの一環として、南シナ海の領有権を中国と争う東南アジア諸国や欧米諸国と足並みをそろえた形だ。

日本が中国の主張に異議を唱えたのは、昨年1月19日付の同委宛て書簡。中国が領有権を主張するスプラトリー(中国名・南沙)諸島などをめぐり、国連海洋法条約では群島国家のみに認められている基線設定で一帯を中国の内水とするかのような主張に対し、「中国の立場を拒否する」と主張した。

その後、中国は8月16日付の書簡で、基線設定が国連海洋法条約ではなく一般国際法で規定されると表明。基線の内側にあたる内水は外側の領海と異なり、外国船舶の無害通航権が認められないため、中国側の主張を認めれば南シナ海支配が強まる恐れがある。

日本は南シナ海の領有権に関して中立的な立場をとっている。しかし、中国による内水設定が違法との立場を明確にすることで、昨年4月の日米首脳共同声明では南シナ海について「中国の不法な海洋権益に関する主張」に反対すると明記。今年5月の岸田文雄首相とバイデン米大統領の共同声明でも同様の文言を盛り込んだ。

こうした経緯もあり、日本政府は大陸棚限界委員会を重視。今月15日の委員選挙では東大の山崎俊嗣教授(海洋地質学)の再選を実現した。外務省幹部は「変な人が委員に入っていると、認めるべきではない主張を認める場合がある。しっかりした人を送り込めてよかった」と語る。

同委では国内最南端の沖ノ鳥島(東京都小笠原村)を基点とする大陸棚延長も審査する。林芳正外相は17日の記者会見で「大陸棚限界委員会に優れた委員が輩出することで海洋法秩序の発展に積極的に貢献していきたい」と強調した。

内水 外側12カイリが領海となる基線の内側の水域。日本では瀬戸内海などが内水に当たり、領海と異なり外国船舶の無害通航権は認められていない。国連海洋法条約ではフィリピンや太平洋島嶼国などの群島国家は、島々を直線で結ぶ基線の内側を内水にできると定められているが、大陸国家には認められていない。

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