『昭和には、そこらじゅうに頑固オヤジがいた』
昔、どこの町にもいた、凄く声が大きくて、怖いおじさん
よその家の子どもでも関係ない。悪いことをしているのを見つけたら、物凄い勢いで怒って飛んできた。今なら直ぐ大問題になりそうだけど、昔はあれが何時もの景色だった。
私も小学生の時、夕方の道でやらかしたことがある。
友だちとボールを蹴って遊んでいて、調子に乗って思いっきり蹴り込んじゃったんだ。
ガシャーン、って。
あちゃー……と思って見たら、町で一番恐れられている頑固おじさんの家の窓ガラス。
一瞬で背中に冷たい汗がブワッと出た。逃げるか、謝るか。パニックで足がすくんで動けない。
その瞬間に、ガラガラガラッ!!って物凄い音で玄関の戸が開いた。
「コラァァァァーーーッ!!! 誰じゃァァァ!!!」
本当に地面が揺れるかと思った。
出てきたおじさんは、顔を真っ赤にして額に血管を浮き上がらせて、もう凄い迫力。
「お前らか! 人の家の窓を何だと思っとるんじゃ!」
しかも、「この前も壁に落書きしたろ!」とか、「昨日の買い食いも見てたぞ!」って、過去のことまで次から次へと出てくる。防犯カメラなんてない時代なのに、全部お見通しだった。
そこから真っ直ぐ立ったまま10分くらい、ずーっと怒鳴られ続けた。
おじさんもハァハァ息を切らしながら、「分かったらさっさと帰れ! 二度とやるなよ!」って戸をピシャリと閉めて終わり。
嵐が去った後、友だちが泣きそうな顔でぽつりと言った。
「うちのお母ちゃんに怒られるかな……」
不思議なことに、あのおじさん、結局最後まで私たちの親には一言も言いつけなかったんだよね。
先生に言ったり親に言ったりして、話をややこしくするわけじゃない。その場で自分のカミナリをドカンと落として、私たちに直接「これ以上はダメだぞ」って教えてくれたら、それで本当におしまい。
後で怖々家の前を通ったら、割れた窓に段ボールがペタッと貼ってあった。子どもながらに「あ、許してくれたんだな」って、もの凄くホッとしたのを覚えている。
今の世の中、よその子どもを怒るなんて危ないし、みんな見て見ぬふりをする。綺麗で静かな町にはなった。
だけど、あの容赦ない怒鳴り声の裏には、「この町のガキは、みんなで守って育てるんだ」っていう、不器用な温かさがあった。
私たちが本当に悪い道に迷い込まないように、ギリギリのところで引き戻してくれていたんだと思う。
大人になった今、あの真っ赤になって怒ってくれた顔が、ちょっと懐かしくなったりするんだよね。