『現代人が見たら二度見する、昭和の家庭に実在した「ブラックホールカーテン」の正体』
昭和のカーテンにはね、じつは「磁石」が入っていたの。
今の子に言うと「えっ、嘘でしょ?」ってびっくりされるんだけど、本当のお話。カーテンの一番下のところに、平べったい磁石や重りがいくつも縫い付けられていたんだよね。
昔の木造のおうちは、冬になるととにかく寒かったの。
窓のすき間から、冷たい風がヒュ〜ヒュ〜って足元に入ってくる。だから夕方になると、急いでカーテンを閉めるんだけど、手を離した最後の瞬間にね、
パチンッ。
裾のところだけが自分からピタッとくっついて、かっこいい音が響くの。
あの音が、子供のころの私にはすごく頼もしかった。「よし、これで今夜は冷たい風が入ってこないぞ」って、すごくホッとしたのを覚えている。ただの布なのに、守られている安心感があったんだよね。
ただ、あの磁石のせいで、よくおうちの中で大捜索が始まった。
お母さんのヘアピンとか、お裁縫の針とか。
「あれ、さっきまでそこにあったのに!」って急になくなっちゃうの。家族みんなで畳の上をハイハイしながら探すんだけど、どこにもない。
諦めかけたとき、ふとカーテンの下の方を見るとね、
……やっぱり、そこにペタッとくっついているの。
探していたピンも、いつ失くしたか分からないクリップまでが、当然みたいな顔をして並んでいるんだよね。「なんだ、ここにいたの!」って家族みんなで笑い合った、あの時間がすごく大好きだったな。
今のおうちは床暖房もあるし、今のカーテンは軽くて本当に静か。
でもね、たまに思い出すの。
寒かったけれど、あの「パチンッ」って音がした昭和の冬は、家族の温かさがすぐそばにあって、すごく幸せだったなって。